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十二国記「白銀の墟 玄の月」1、2巻

台風の影響で入手が遅れましたが、さっそくかぶりつき、2日で2冊読了いたしました。私は5〜6年前に十二国記を知って読み始めたので、18年は待っていませんが、それでも続きが知りたいと焦れた気持ちでおりました。中でもやはり「驍宗サマどこー!」というのが一番知りたいことであったので、第1巻表紙の凛々しい泰麒の姿を見た時には、「驍宗様をお救いする!」という強い覚悟をその瞳に湛えているように感じ、胸が高まりました。きっと今作はこんなに大きくおなりな泰麒が李斎と飛影に乗って驍宗様を探しに行く胸踊る展開になるに違いない・・・と。

 

少しずつ解きほぐされてゆく本編。真実がちらちらと見えてくるようで、話はなかなか動きません。なにより泰麒の心のうちが明かされない。暗黒の蓬莱生活を経て策士になってしまったのか、それともあくまで麒麟として正しい行動を取っているだけなのか、それすらもわからないのです。そして読み進めていく途中、私ははっと思ったのです。ひょっとしてこれは「泰麒が驍宗様をお救いして玉座を奪還する話」ではないのではないか?

 

もちろん話はまだ半ば。11月を待って3、4巻を読まないことにはわかりません。しかし「黄昏〜」を思い出してみるに、あれは天の理を説いた話でありました。黄昏〜の最後、李斎と西王母との問答を読むと、天は無情であることがわかりました。個々の国の事情を鑑みて手を差し伸べたりはしない。天が与えるのはシステムで、生きるのはあくまで人の力、と(うろ覚え)。そう考えると、今作は浅はかな私が期待した「驍宗様と泰麒と仲間たち」の話ではなく、「天意システム」そのものの話なのではなかろうかという気もします。話の中でも言われていますが、泰麒はあくまで戴の民を救う王を選ぶことが役割で、驍宗だけの麒麟ではありません。だからこそ、どんなに驍宗を敬愛していても、天の理に合わなければ情を捨てることさえ求められるのかもしれない。読者は彼が苦しみ悩んで驍宗を王に選んだことを知っています。だから彼らの絆は強いはずだ、謀反に負けないで!いつか再会できるよ!と応援したい。だから驍宗が王であるべきと考え、ともに玉座を奪還したいと考える李斎に共感しそうになります。しかし、今回全4巻で描くのは、そんな情や忠誠心の個人的話の集合体ではなく、もっと大きな、天の理というシステムが与える影響の構造そのものを見せられているような気がしてきました。謀反は起きた。では私怨を超えて、民のために何を選び、捨てることができるのか。そういう前提に立って次巻を想像すると、やはり泰麒は麒麟。心の中は別にして、李斎とは違うのだな、というところが垣間見えてきた・・・ようなちがうような。

 

まだまだ真実も泰麒の真意もわかりませんが、3と4巻楽しみです。表紙は李斎と阿選。どんな展開を迎えるのだろう。黄昏〜から続く、天とは、人とは、生きるとは、この世は箱庭なのか、というところが突き詰められるのかしら。もちろんそういった哲学的問答も楽しみにしています。がしかし、それでも驍宗サマ生きてて、「おおきくなったな」と声をかけ、喜びのあまり泰麒の角がピコーンと復活し、そこに最強の使令傲濫がパワーアップして駆けつけ敵を一掃・・!みたいなハッピーエンドの詰め合わせを見たい幼稚な自分もいます。

 

 

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)

 
白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)

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