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「百姓貴族」 荒川弘

YouTubeでなつかしい90年代音楽を聴く → 90年代ロックバンド特集の中にL'Arc〜en〜Cielを発見。ほぼ初めてちゃんと聴く。 → L'Arc〜en〜Cielがマディソンスクエアガーデンでライブをしたことを(今更)知る。よく知らないのに同じ日本人として感動。 → なぜ彼らが海外でこんなに人気があるのか調べる。 → 「鋼の錬金術師」というアニメの主題歌がひとつのきっかけとしてあったことを知る。 → 「鋼の錬金術師」はどんな漫画だろうかとAmazonで調べ、物語の評価が高いことを知る。 → 作者が女性であることを知り、そのギャップに一体どんな人だろうかと俄然興味が湧く。 → 漫画家になる前は家業の農業に従事していたことを知り、「百姓貴族」という漫画を出版していることを知る。→ 購入。

 

という、インターネットの彷徨い方としてはありがちな連想ゲーム方式でたどり着いた本書です。なんというか・・・、面白かった。農業に従事している人の生存能力の高さに驚き、都会で自分の体を酷使することなくぬくぬくと暮らしている自分を省みて恥じ入るような気持ちになりました。私も日本人ですから「いただきます」は毎食言います。しかしそれが「命をいただく」ことを意味していることは、恥ずかしながらかなり大人になるまで理解していませんでした。この言葉にこそ、日本人の自然観とか命に対する考え方とか詰まっているのかもしれないと、考えさせられます。その源流である食べ物の命そのものに関わっている人たちは肝の座り方が違う。都会にいるとぬるい正義感を振りかざしたくなることも多いのですが、命を消費することにセンチメンタルな気持ちを抱くのではなく、人間は雑食動物であるという事実の上に立って労働する農業酪農漁業に携わる方々はすごい、と生ぬるい都会の人間にありがちな感想を抱きました。

 

それにしても学校から帰って来たらご近所の猟師さんからのおすそ分けの鹿の脚が玄関に置いてあったとか、農業高校の食品加工の授業でニワトリの内臓抜くとか豚の去勢手術実習があるとか・・・生と死と食肉の境界線に生きてる様が逞しすぎる・・!この本を読んでいると農業と獣医という違いはあれど、北海道のダイナミックな自然現象に対して泰然としている様から「動物のお医者さん 」を思い出します。

 

しかし、絵を描きながらも北海道で農業をしていた作者の方がどのようにヨーロッパを舞台とした錬金術にたどり着いたのか、その辺も興味が湧きます。

 

 

百姓貴族 (1) (ウィングス・コミックス)