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お札の肖像を考える

先日テレビ番組でお札に肖像画が使われるのは複製しにくい複雑なデザインにして偽造を防ぐためということを取り上げていました。

そもそもお札の肖像人物はどういう基準で選ばれるのだろう。

製造元の独立行政法人 国立印刷局 によると大まかな条件は下記の通り。

  • 日本国民が世界に誇れる人物
  • 一般的によく知られている
  • 精密な肖像画(写真)が残っていること

上記を踏まえて財務省日本銀行国立印刷局の三者が協議し最終的には財務大臣が決定するそうです。

つまり外国や各種団体からの突っ込みが少ないポリティカリー・コレクトな人物で、清々しい業績を残している人とも言えましょうか。最近の傾向をみていると、近代の文化人枠からバランス良く、男女の差も徐々に減らして選考しようという印象を受けます。

 

決して叶わぬ希望と理解しながら私が夢想するのは、日本のお札にテーマを設けたシリーズものです。例えば、戦国武将という縛りで千円・五千円・一万円のお札に載る武将を選ぶ。そうすると一万円は誰にすべきか・・という思索の旅が始まります。やはり一万円札は世に太平をもたらした功績を持つ徳川家康にお願いすべきか。いや格好良さと人気具合で織田信長の方が一万円札の箔がつき持っていても気分が上がるのかもしれない。そうすると五千円札と千円札信長クラスの家臣レベルにするべきか、それとも信長、家康、秀吉の三者を三枚のお札に配置した方がいいか。いやいや信長系譜シリーズ、豊臣シリーズ、徳川シリーズなど分けても楽しそうだし、関ヶ原の合戦シリーズも考え応えがありそうです。

 

または日本のクリエイティビティをお札を通して見せつける「インパクト兜シリーズ」もいい。私としては、そぎ落とした禅的美しさに美意識を感じる伊達政宗公の兜に一万円札をお願いしたい。日本の心は椀ものにあり・・ということで黒田官兵衛さんのお椀が乗ってる兜もコンパクトにまとまっていて素敵です。飲食店での支払いに使われることも多いと思われる五千円札に是非どうだろう。千円に控えるのは変わり兜で織田氏家臣のも森可成さんはいかがか(森可成の二枚胴具足)。でも彼の兜の高さは凄まじすぎてこれではお札に入りきらない。そこで戦国武将に大人気だった伊勢海老モチーフの兜や動物系も捨てがたいし、信長の娘婿蒲生氏郷さんの燕を模した兜も黒々としていて素敵だ(蒲生氏郷公具足・兜)。こちらのサイト(海鮮すぎる戦国時代のオモシロ兜たち)で大変個性的な海の幸系の兜が数多く紹介されていましたが、蛸の兜がまるで生きているようで素晴らしい。千円札にはこれを是非押したい。それにしても自分のアイデンティティを示したり、戦で間違われないために派手な変わり兜が大切だったのだと察しますが、海産物シリーズとか戦場でぷっと吹き出されたりしなかったか気になります。

 

ありえないからこそ想像するお札の肖像コンペティション。いつか歴史好きの担当機関の方々がこんな素敵なお札を世にもたらしてはくれまいか。