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そぞろごと Reviews + Opinions

大人になって読む「ないたあかおに」

私、来月の節分に向けて頭の中が鬼でいっぱいです。我が家の小さな子供は鬼をやたらこわがるので、鬼の話なのにふんわりとしていい話だったという記憶のある「ないたあかおに」を入手し、嫌がる子供に無理矢理音読して聞かせました。なにせ30年以上も前に読んだので、赤か青の鬼が手紙を読んで泣いていたくらいの記憶しかないんですけれど、本日読んでみると思い出の通り良いお話でした。我が子にもこの鬼たちのように相手を思いやる気持ちを持って、友のために迷いなく行動できる人間になってもらいたいものだわ・・とつまらない正論の感想を最初に書いておく。

 

世の中にはいい鬼もいるんだぜと言いたくて読んだのですが、最後の数ページ嗚咽レベルで泣いてしまい、子供に不審な目を向けられました。青鬼から赤鬼に宛てた友情溢れる手紙に胸をえぐられてしまいましたが、特に泣かされた言葉は、

「どこに いようと、 きみを おもって いるでしょう。きみの だいじな しあわせを いつも いのって いるでしょう。」

です。あああ、なんて暖かい。

 

しかしなぜ鬼たちの暖かさに触れて大人の私は泣いたのでしょう。赤鬼は自分に向けられた青鬼の友情の深さに気づけなかったことや、結果として自分が彼を追いやってしまったことに対する罪悪感もあって泣いたのだと思います。しかし私の場合、子供の時はここを読んでも泣きたい気持ちにはならなかった。だからきっとあの時私の中にはなかった何かが泣かせているに違いない。それは成長して世の中決してきれいなものだけではないことを知ってしまった大人の私が、忘れていた純粋できれいな心に触れたからか。それとも赤鬼と青鬼のような篤い友情関係のない淡白な自分の生活を鑑みたからか。いや、そもそも現実ではこんなすてきな台詞を大人の友達同士では中々言い合ったりしないから、そんな熱い状況が羨ましかったのか・・。

そんなことをごちゃごちゃ考え泣きながら読んでいた母のせいで、子供の心には何も残らなかったに違いない。

 

ないた あかおに (絵本・日本むかし話)