点々

そぞろごと Reviews + Opinions

「リトルマーメイド」を通して考える子育て親育ち。

ディズニー映画、好きです。冷めた視点に逃げることなく夢や希望や冒険を堂々と描き、ハッピーエンドで語り切る姿勢が好きです。必ず明るい気持ちで観終われるのが心地いい。ディズニーの音楽も汚れのない気持ちにさせてくれるので私のYouTubeプレイリストに頻繁に登場しますが、"Part of your world"は最近のお気に入りです(今さら)。この曲自体も好きですが、この歌のクライマックスを歌うアリエルの表情がすごくいい。嵐の中助けた王子を運命の相手だと認めるや、退屈な日常に見切りをつけさせてくれる何かを、人生を変えるような何かを「見つけた!」と語るかのような強い女の子の顔。その期待におののく表情の背後には、たとえ嵐のような激しい変化を伴うものでも受け入れてやるわ!という覚悟が潜んでいるようにさえ感じます。腹を括った覚悟のある女の子ってすごくいい。好きです。

 

www.youtube.com

 

それにしても私は一児の親です。少女と王子様のロマンスよりも、堅物オヤジの海王と好奇心を抑えられない破天荒ムスメの親子関係にばかり目が行ってしまいました。海王父さんは自分の示すルールを守らず禁じたことばかりに興味を持つアリエルに激怒し、彼女の憧れの全てが詰まった部屋を破壊してしまいます。父さんなぜこんなに怒ったんでしょう。

海の王家と比較するのもなんですが自分の子育てを省みて考えるに、子供に対して最もいらいらとした気持ちが高ぶってしまうのは、理由を突き詰めて考えれば多くの場合、「自分の思う通りにならないから」という点に行き着きます。ウン十年慣れ親しんだ自分の生活スタイルに子供を従わせたい、自分の組んだ予定通り子供に行動してほしい、自分の思い描くような子供に育ってほしい・・などなど無意識に思っている気がします。親の作ったルールに子供を閉じ込めると何が起きるか。そりゃあ反発に決まっています。どんなちびっこだってひとりの立派な人間であり、意思も考えも自我もあるのですから。しかし自分が子を持って初めて知りましたが、親だって未熟な人間です。自分の思う通りにしたいという子供っぽい心を隠し持っていたりします。だけど子供は自分と切り離された一個人だと認めなきゃいけない、いけないのです。

 

終盤カニかエビのセバスチャンが言います。

"Children got to be free to lead their own lives."

「子供たちには自由な生き方を選ばせるべきですな」

 

海王父さんはアリエルの気持ちの真剣さを知り、協力する道を選びました。これは父さんが自分の主張を我慢して折れたのではなく、固執していた自分の考えを捨て新たな価値観を受け入れたという成長の瞬間です。レベルアップです。つまりアリエルは自分の所有物ではなく、自由な意思を持った人間(魚)であり尊重してしかるべしということを認める勇気を持ったのです。その結果として娘は去って行きましたが、彼女は大いなる幸せを手に入れ、人魚と人間の世界の隔たりも消えました。万々歳のハッピーエンドで、涙、涙です。エンディングの大円団を眺めながら、親子関係における親の幸せとは子供の幸せに尽きるのだろうと考えました。そのために親ができることは、先周りして道を整えることではなく、より良い道に誘導することでもなく、痛い目に遭わないよう鳥かごに閉じ込めることでもない。できるだけ子供の冒険に手を出さず見守る勇気を持つことなのだろうと思うに至りました。親が具体的にできることなんて、せいぜいごはんをたらふく食べさせて強い心と体を作ることくらい。せめて日々の炊事をおろそかにせず、親子共々強靭な心を育みたいものです。